テーマブックス

vol.27村上春樹と絵本

ちひろ美術館・東京では、現在<企画展>村上春樹とイラストレーター - 佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸 -を開催中です。( 2016年5月25日(水)~8月7日(日) )
本展にちなみ、「村上春樹と絵本」をテーマに本を集めました。


『ふしぎな図書館』
『ふしぎな図書館』
村上春樹 文 佐々木マキ 絵
出版社講談社 出版年 2005年
ある日、ぼくが図書館へ本を探しに行くと、地下の107号室へ案内されます。そこは「ふしぎな図書館」の入口でした。本を貸し出してくれた小柄で不気味な老人にぼくは監禁されてしまいます。羊のかっこうをした小さな男、「羊男」と「見ているだけで目が痛くなるくらいきれいな女の子」と出会い、ぼくは地下室からの脱出を企てます。村上春樹の短篇集『カンガルー日和』に収録された「図書館奇譚」を原形にした絵本。1985年に絵本『羊男のクリスマス』で共作をした佐々木マキとこの作品で再びコラボレーションをしています。村上のなかに息づいていた「羊男世界」は佐々木の迷いのない線によって鮮やかに視覚化されています。
『羊男のクリスマス』
『羊男のクリスマス』
村上春樹 文   佐々木マキ 絵
出版社講談社 出版年 1985年
クリスマスの日に聖羊上人へ捧げる音楽をつくることになった羊男ですが、掟を破ってドーナツを食べてしまったために呪いがかかり、どうしても作曲ができません。呪いを解くために、自分で掘った穴に落ちた羊男は、異界へと迷い込み、次々と変てこなものたちに出会います。 学生時代から佐々木マキのファンだったが村上春樹が、その絵からインスピレーションを受けて物語を書き、さらにそれを佐々木が絵にするという過程を経て、この絵本は生まれたといいます。羊男や羊博士、双子、ねじけ(・・・)、なん(・・)でも(・・)なし(・・)といった不可思議なキャラクターを、佐々木は見事に視覚化し、「羊男世界」にリアリティを与えています。
『おおきな木』
『おおきな木』
シェル・シルヴァスタイン 作・絵  村上春樹 訳
出版社あすなろ書房 出版年 2010年
少年とりんごの木はとてもなかよし。少年は毎日、木のもとを訪れ、かくれんぼをしたり昼寝をしたりして過ごします。やがて成長し、少年は変わっていきます。それでも木は大好きな少年に、果実や枝や幹を惜しみなく与え続けます。 幹のわずかな傾きや葉の動きで、木の感情を表現した線描や、舞台のように定点で展開する構図は、シンプルでありながら驚くほど変化に富んでいます。 1976年より、本田錦一郎訳(篠崎書林)で親しまれていた本書は、2010年、村上春樹訳で新たに出版されました。木は、少年は、誰であり何を意味するのか、「物語は人の心を映す自然の鏡のようなもの」と村上は語っています。無償の愛、人類の原罪、主権在民……、短く簡潔なことばでつづられた物語に、読者は自らが歩む人生を重ね、さまざまな主題を見出します。
『ポテト・スープが大好きな猫』
『ポテト・スープが大好きな猫』
テリー・ファリッシュ 文   バリー・ルート 絵  村上春樹 訳
出版社講談社 出版年 2005年
アメリカ南部テキサスの田舎に、おじいさんは一匹の猫と住んでいます。おじいさんのつくるポテトスープが好物の猫は、湖への釣りにも一緒に行くのが慣例。だからといって、猫は魚をつかまえるわけでもなく、ただボートに気持ち良く乗っているだけ。ある朝のこと、おじいさんはいつものように、釣りに行こうと声をかけますが、猫はぐっすりと眠っています。あきらめて一人おじいさんはでかけますが…。やわらかな光と影の印象的な絵のなかに、老人と猫の静かな時間が流れています。見返しには、おじいさんと猫のお気に入りの電気毛布の柄が。よく見ると猫の毛まで!大の猫好きの村上春樹がアメリカの書店の店頭で目にし、表紙に一目ぼれしてすぐ翻訳したという一冊です。
『空飛び猫』
『空飛び猫』
文 アーシュラ・K・ル=グウィン 訳 村上春樹  絵 S.D.シンドラー
出版社講談社 出版年 1993年
翼が生えた4匹の子猫の物語。ある日、お母さん猫から「ここから飛んで出ていくためにその翼を授かったのです」と言われた子猫たちは、危険な路地裏から森へと飛び立ちます。そこで動物たちと出会い、さまざまな経験をした彼らは、最後にやさしい人間の「手」と出会うのでした。 「村上さんなら、こういうのを訳してみたいと思われるんじゃないでしょうか」という読者からの手紙でこの本に出会った村上春樹は、S.D.シンドラーによる表紙絵を一目見て、翻訳を決意したといいます。猫特有の仕草や表情、翼の羽毛の流れまでをも繊細に捉えたシンドラーの写実的な表現は、物語にリアリティーを与えています。
『急行「北極号」』
『急行「北極号」』
クリス・ヴァン・オールズバーグ 絵・文 村上春樹 訳
出版社あすなろ書房 出版年 2003年
雪降るクリスマスイブの晩、サンタを信じて待つ少年の家の前に現われたのは、白い蒸気に包まれた汽車、急行「北極号」。列車はパジャマ姿の大勢の子どもたちを乗せて、狼のいる暗い森を抜け、山や谷を越え、北へ北へとひた走り北極点をめざします。北極点の町に着くと、たくさんの小人に囲まれたなかにサンタが姿を見せ、少年に「プレゼントの第一号」を手渡します。「光の魔術師」とも評されるオールズバーグは、列車の窓や北極点の町のあかりを、パステルのやわらかな色彩で印象深く描き出しました。「オールズバーグの描く絵はどれだけ長く眺めていても飽きるということはない」という村上は、日常と非日常が混じりあうオールズバーグの幻想的な絵本の訳を、11冊手掛けています。本書は1987年の初版(河出書房新社)の改訳版で、より平易な表現で親しみやすい訳になっています。
  • 『ふわふわ』 村上春樹 文 安西 水丸 絵 講談社 1998年
  • 『魔法のホウキ』 C・V・オールズバーグ 作・絵 村上春樹 訳 河出書房新社 1993年
  • 『西風号の遭難』C・V・オールズバーグ 作・絵 村上春樹 訳 河出書房新社 1985年