テーマブックス

vol.25デザインと絵本

デザインと関連した絵本をご紹介します。


『ちいさなうさこちゃん』
『ちいさなうさこちゃん』
ディック・ブルーナ 文・絵 石井桃子 訳
出版社福音館書店 出版年 1964年
白いうさぎの夫婦「ふわふわさん」と「ふわおくさん」のもとに、ある晩、天使が現れ、あかちゃんの誕生を予言します。日本で愛され続けている「うさこちゃん」シリーズの1冊。
グラフィックデザイナーとしても活躍するディック・ブルーナが作り出す絵本は、明快な色と形と線を使い、シンプルかつ鮮やかに構成されています。2等身の愛らしいキャラクターは黒くはっきりした線で象られ、絵本の頁をめくる度に、均一に塗られた赤・青・黄・緑の色彩が展開します。
「色は一種の視覚言語である」と考える画家にとって、カラーデザインは絵本制作における最も重要な要素のひとつです。背景の色は、各場面の印象に、「赤はあたたか味」「緑は安心感を与える」など、画家が持つ色のイメージを重ね、自らが“ブルーナカラー“と呼ぶ限定された6色のなかから選ばれます。ポップでありながら洗練された色彩と、絵本全体のなかでのカラーバランスが、ブルーナ特有の魅力となっています。
『あかいふうせん』
『あかいふうせん』
イエラ・マリ 作 
出版社ほるぷ出版 出版年 1976年
イタリアのデザイナー、イエラ・マリによる文字なし絵本です。まず、緑の地に補色である赤い風船を配した表紙に目を奪われます。頁をめくると、緑一色の見返し、そして真っ白な地に赤く丸い風船を描いた扉頁へと続いていきます。本文頁では、16場面のなかで、赤い形が姿を変えていきます。浮かびあがった風船が、高い枝に実るりんごへ、枝から落下したりんごが、舞い上がる蝶へ……。各場面の構図は、次の頁への展開を予感させる綿密な計算がなされています。次々に赤い形が変化していくさまは、まるでアニメーションをみているかのようです。
『あおくんときいろちゃん』
『あおくんときいろちゃん』
レオ・レオーニ 作 藤田圭雄 訳
出版社至光社 出版年 1967年
仲良しのあおくんときいろちゃんは一緒に遊んでいるうちに色が混ざり合ってみどりになってしまいました。どちらの家族からも、うちの子は、みどりではないと言われ、悲しくなって泣いていると、涙は青と黄色の粒となって、無事に元のあおくんときいろちゃんにもどることができました。レオーニは、起承転結のはっきりした物語を、色紙をちぎった色面で描いています。抽象的な色と形は、見る人の想像力に働きかける見立てのデザインによって命を吹き込まれ、ページからページへと自在に動き始めます。
『ワークマンステンシル』
『ワークマンステンシル』
三浦太郎 作
出版社こぐま社 出版年 2014年
見開きの余白を生かしたページのなかに、荷物を背負って運んだり、木を切り倒したり、乗り物を運転する人々の機敏な動きが次々と展開していきます。人物は、人の動きを表現するために三浦が考案した23のパーツからなるステンシル(型抜き定規)を使って黒いシルエットで、人物以外の重機や荷物などはオレンジのシルエットで表現されています。黒とオレンジのコントラストとステンシルを使ってとらえた働く人々の動きには、プロダクトデザインに見られるような無駄を省いた美しさが感じられます。
『あな』
『あな』
谷川俊太郎 作 和田誠 絵
出版社福音館書店 出版年 1983年
グラフィックデザイナー、イラストレーターから映画監督まで……、さまざまな分野で多彩な才能を見せる和田誠。谷川俊太郎の文に、和田が絵を描いた『あな』は、日曜日の朝、何もすることがなく穴を掘り始めた少年の物語。「完成された原画を忠実に再現させることに印刷を使うのではなく、印刷という手段を通じて初めて完成される仕事をするのも、デザイナーの喜びである」という和田は、はじめに黒インクで輪郭線を描き、印刷段階でどこをどのような色にするか指定することによって彩色しました。同じ色、似た構図を用いた場面の繰り返しや、細部を描きこまず少ない線で登場人物の性格を捉えた和田の表現は、「なんの理由もなく穴を掘るという行為が、人間の深層心理に触れている」と語った谷川の余分な言葉を削ぎ落とした抽象的な文と豊かに響きあっています。
『ちいさな1』
『ちいさな1』
アン・ランド&ポール・ランド 作 谷川俊太郎 訳
出版社ほるぷ出版 出版年 1994年
グラフィックデザイナーであるポール・ランドは、会社のロゴのデザインなどで特に知られ、彼の手がけたIBM社や、輸送業のUPSのロゴは、現在にいたるまで使われています。ポールは、妻のアンと4冊の絵本を手がけました。1962年に出版されたこの本は、数の1が主人公。1は2つのなし、3頭のぬいぐるみ、4匹のはち……どの仲間に入れてもらえず寂しい想いをします。ただの1であることを嘆いているときに現れたのが赤い輪っか。輪はゼロとなり、ふたりで10に。1は、友だちを見つけ、楽しく遊びます。書籍のデザインも数多く手がけたポールが描くシンプルな線と、置かれた色面がリズミカルに配置されています。
『ふしぎなかず』
『ふしぎなかず』
クヴィエタ・パツォウスカー 作
出版社ほるぷ出版 出版年 1991年 絶版
『ふしぎなかず』は、一般読者が手に取ることのできる本として出版されたパツオゥスカーの最初の仕掛け絵本です。「本は建築物」と語るパツォウスカーは、本のなかにも扉や穴、鏡などを作り、読者は遊びながらページをめくります。テーマは数。「文字や数字には何千年という文化の歴史に磨かれた美しさを感じる」という彼女は、数える楽しさのみならず、数字の形のおもしろさにも注目しています。朱色の入った赤と、補色の緑が随所に使われ、全体に統一感をだしています。
『きりのなかのサーカス』
『きりのなかのサーカス』
ブルーノ・ムナーリ 作 谷川俊太郎 訳
出版社フレーベル館 出版年 2009年
深い霧に包まれた都市をぬけると、きらびやかなサーカスの光が…。原題は「ミラノの霧のなかで」、谷川俊太郎の新訳による復刊本。グラフィックデザイナーとして活躍したムナーリは、「視覚による伝達」を追求し、紙や印刷の効果を巧みに生かしたオブジェのような絵本を数多く制作しました。「言葉と絵だけでなく、紙そのものも表現媒体として使いたかった」と語り、本書では霧を表現するのにトレーシングペーパーを用いています。半透明の乳白色を背景に、黒いシルエットで描かれた車や都市の風景が透けて重なり合い、ページをめくると霧のなかを進んでいく感覚が楽しめます。サーカスでは一転カラフルな色紙を重ね、ときに穴をあけて他のページの色をのぞかせるなど、色鮮やかで喧噪に満ちた世界が展開します。視覚や触覚に働きかける仕掛けや遊び心にあふれた一冊です。
『おおきくなるの』
『おおきくなるの』
堀内 誠一 作・絵
出版社福音館書店 出版年 2004年
小さいときの靴下はもうはけなくなったけど、お姉さんの帽子はまだぶかぶか。3才の誕生日を迎えた少女が成長することに喜びを感じ、大人になったら何になろうかと思いを巡らす絵本です。お花のたねはお花になり、毛虫は蝶になるなど、大きくなるということをさまざま面でとらえ構成しています。グラフィカルで、切り絵のような描写を基調としながらも、ろうそくの火のゆらめきや、蝶々の羽ばたきは絵具のにじみで描かれ、それぞれの質感までも伝わってくるようで想像力を掻き立てます。初版は1964年。カラフルな色使いとモダンな表現が、今読んでも新しい一冊です。