テーマブックス

vol.28世界のトットちゃん

今夏、安曇野ちひろ公園にオープンしたトットちゃん広場にちなみ、トットちゃんのように活発な女の子の登場する絵本を紹介します。


『げんきなマドレーヌ』
『げんきなマドレーヌ』
ルドウィッヒ・ベーメルマンス作 瀬田貞二・訳
出版社福音館書店 出版年 1972年
パリの寄宿舎に12人の女の子が暮らしていました。そのなかで一番のおちびさんがマドレーヌです。ある晩、いつも元気なマドレーヌが盲腸炎にかかり、救急車で病院に運ばれます。先生のミス・クラベルと女の子たちがお見舞いにいくと、マドレーヌはお見舞いのお菓子やおもちゃのある部屋にいて、誇らしげにおなかの手術の傷をみせるのでした。盲腸炎がうらやましくなってしまいますね。エッフェル塔やコンコルド広場、オペラ座などのパリの名所を舞台に、女の子たちの寄宿舎生活が、いきいきと描かれています。1939年に発表された絵本ですが、「マドレーヌ」は、今も世界中の子どもたちの憧れの女の子です。
『ゆうかんなアイリーン』
『ゆうかんなアイリーン』
ウィリアム・スタイグ作 おがわえつこ訳
出版社セーラー出版 出版年 1988年
お屋敷に住む奥さまのために、素晴らしいドレスを仕立てたお母さん。今夜のパーティーに間に合うように届けなければならないのに、お母さんは風邪をひいて元気がありません。「わたしが とどけてあげる」アイリーンは、お母さんの替りに、大きくて重い洋服箱を抱えて、雪のなかを出発します。四方から押し寄せる猛吹雪はアイリーンを翻弄し、大切なドレスまで奪い去ります。けれど、アイリーンは、決して、あきらめたりせず、大好きなお母さんを思って奮い立ち、お屋敷を目指します。厳しさに打ち勝つアイリーンの勇敢さと、アイリーンを育んだお母さんの大きな優しさが、戸外の厳しい情景とあたたかで心地よい室内に重ねて描かれているようです。
『すてきな 三にんぐみ』
『すてきな 三にんぐみ』
トミー=アンゲラーさく いまえよしとも やく
出版社偕成社 出版年 1969年
黒いマントに黒いぼうしの、泥棒三人組は、夜毎、馬車を襲っては財宝を奪い、山のてっぺんにある隠れ家へと運び込んでいました。ある晩、三人組が襲った馬車に乗っていたのは、みなしごのティファニーちゃんだけでした。いじわるなおばさんのところへ引き取られるはずだったティファニーちゃんは、「この おじさんたちのほうが なんだか おもしろそう」と喜んで三人に連れられていきます。ブルーグレイの宵闇のなかに浮かび上がる三人組の黒いシルエットは、いかにも禍々しく感じられますが、ティファニーちゃんの登場により、一転してユーモラスな印象に。どんな状況にあっても天真爛漫な子どもの心が、こわーい三人組をすてきな「義賊」へと変身させました。
『わたしと あそんで』
『わたしと あそんで』
マリー・ホール・エッツ ぶん/え よだ・じゅんいち やく 1955年作
出版社福音館書店 出版年 1968年
原っぱでわたしはいろいろな生き物にであいます。ばった、かえる、かめ、りす、うさぎ…。わたしは嬉しくて、「あそびましょ」と声をかけて捕まえようとしますが、みんな驚いて逃げてしまいました。ひとりぼっちのわたしが池のそばで静かに腰かけていると、みんなが戻ってきました。しまいには鹿のあかちゃんも近寄ってきて、わたしのほっぺたをなめました。自分の気持ちを前面に出すのではなく、相手の気持ちを尊重すると相互理解が深まって、仲良しになれますね。柔らかな線描とシンプルで優しい色合いのこの絵本は、半世紀にもおよんで多くの人に親しまれているエッツの代表作です。
『もしゃもしゃちゃん』
『もしゃもしゃちゃん』
マレーク・ベロニカ 文・絵 みや こうせい 訳 
出版社福音館書店 出版年 2005年
一軒の家に子どもたちが住んでいました。そのなかの一人、マリカは歯磨きをせず、お風呂にも入らず、髪もとかしません。みんなから、もしゃもしゃちゃんと呼ばれています。ある日、仮装パーティーをすることになり、妖精になりたいと言ったマリカは、皆に笑われてしまいます。 自分が助けた森の木や動物たちに支えられ、身だしなみを整えたマリカが、もしゃもしゃちゃんから素敵な女の子へと変身する物語。 自らの願いを叶え、しあわせへと導くことができるのは、魔法でも偶然でもなく、自分自身の行動なのだと教えられます。単純化かされた形や明確な線描、鮮やかな色彩による洗練されたデザインも、マレーク・ベロニカの絵本の魅力です。
『おこちゃん』
『おこちゃん』
山本容子作
出版社小学館 出版年 1996年
おこちゃんとは、作者の山本容子が小さいころ自分の「よおこ」をそう表現した名前。口が大きく眉毛が太く、ただものではない雰囲気の子どもです。あらゆることに興味をもつ彼女と、その行動に驚嘆する家族のようすが、童謡「ぞうさん」のリズムでつづられていきます。「おこちゃん、おこちゃん、チューリップがすきなのね。」「そうよ、かあさんもすきなのよ。」ここまでは、分かりますが「おこちゃん、おこちゃん、とうしておはなをつんじゃうの。」「だって、こんなにきれいなのでちゃいろくかれるとかわいそうだったからよ。」奇想天外なおこちゃんに、読む人もきっとびっくりしてひっくりかえることでしょう。銅版画の絵とともに描き文字がおこちゃんのように、自由自在に踊っています。
『ロージーちゃんのひみつ』
『ロージーちゃんのひみつ』
モーリス・センダック 作・絵 中村妙子 訳
出版社偕成社 出版年 1969年初版 1983年改訂版
ロージーちゃんの家の玄関に、一枚の札がかけられています。《ひみつをおしえてほしい ひとは、このとを三どたたくこと》。訪ねてきたキャシーに、「あたしね、もうロージーじゃないの。ひみつって、そのことよ」といい、自分はアリンダというミュージカル歌手だと名乗ります。アラビアの踊り子になったキャシーも加わって、華やかなショーが開幕。友だちの拍手のなか、羽のついた大きな帽子をかぶり、ハイヒールを足につっかけ、ドレスの裾を引きずりながらロージーちゃんが登場します。自分ではない何者かになりきる「ごっこ遊び」は、幼いころ誰もが夢中になったことがあるでしょう。ニューヨークの下町ブルックリンに生まれ育ったセンダックは、町で遊ぶ子どもたちのスケッチをもとに、この絵本を構想したといいます。「子どもたちは、ファンタジーと現実と、二つの世界を自由に出入りしている」とも語ったセンダックは、想像力を広げ遊びに熱中していく子どもたちの高揚感を、軽快な動きでコミカルに表現しています。
『ロッタちゃんとじてんしゃ』
『ロッタちゃんとじてんしゃ』
リンドグレーン 作 ヴィークランド絵 山室静 訳
出版社偕成社 出版年 1976年
ロッタちゃんはもうすぐ5歳。お兄さんやお姉さんのようになりたくてしょうがありません。自転車をとばす2人を見ながら、「あたいだって、ほんとにのれるんだから。ひみつだけど!」とつぶやくのです。誕生日の日、プレゼントに自転車をもらえなかったロッタちゃんはこっそり、おばさんの家の物置から古い自転車をやっとのおもいで盗みだし、またがったとたん、自転車は走りだし…。どんなことがあっても、自分のやりたいことをまげないロッテちゃんの喜怒哀楽と、ヴィークランドはみごとにとらえています。スエーデンの街並みや自然、風物が明るい色で鮮やかに描かれ、読者もロッタちゃんを応援したくなる1冊。