ちひろの花の絵に数多く登場するのがバラです。少女と比較すると、巨大ともいえるバラが横からも上からも伸びてきていて、葉や棘はほとんど描かれていません。写実的手法にとらわれない大胆で装飾性に富んだ画面ですが、絵に不自然さを感じないのは、バラのビロードのようにやわらかな質感が見事に表現されているからでしょう。少女の澄ました雰囲気やドレスと、バラの花のイメージが重なります。ちひろの庭には、真紅と白のツルバラがからむバラ棚があり、傍らにはピンクとクリーム色の大輪のバラが咲いていました。花を手入れし、その微妙な色合いや感触を知り尽くしたちひろならではの1点です。