主人公の少女と、隣に越してきた少年が友だちになるまでの心の機微を描いた至光社の絵本『となりにきたこ』の最後の場面。ようやく仲良しになれたふたりの関係を、表情のみえない後ろ姿によって語らせています。夢中になって壁に落書きをする様子が、少年の伸び上がるような仕草によく表れています。ちひろはこの時期、器用にまとまってしまう画風を刷新しようと、細かな描写に不向きなパステルで制作に臨みます。細部へのこだわりを捨て、線描によって子どもの動きを伸びやかにとらえることに成功しています。オリーブグリーンの輪郭線は、70年に集中して描かれたパステル作品の特徴のひとつです。