少し上体を傾け、床に手を伸ばして取ったのは、山で採ってきた枝でしょうか。目は扉の開いたストーブのなかの火に向けられ、火の加減を見ながら思案しているようです。少女の頬は、焔の熱でほんのりと赤く染まっています。

ちひろが黒姫高原にアトリエを兼ねた山荘を建てたのは一九六六年のこと。木々に囲まれた空間のなかで、絵本の構想を練って描いたり、家族とのひとときを楽しんだり。東京のアトリエとはまた異なった時間を過ごしました。描かれたストーブは、黒姫のアトリエに実際にあったもの。この上でシチューを煮込むなど、山の中の生活には大切な存在でした。