赤、青、黄色、紫……、色とりどりのにじみが、やぎと向かい合う男の子の周りに広がっています。1951年、ちひろは一人息子の猛をもうけました。当時、夫は司法試験のための勉強中で、ちひろは自らの絵筆一本で家計を支えるため、やむなく1カ月半の息子を長野県の松川村の両親に預け、お金を貯めては会いに行く生活が10カ月近く続きました。ちひろの両親のもとで、猛は飼っていたやぎの乳で育てられたといいます。その後も、ちひろは家族とともに、信州の実家を何度も訪れています。息子・猛に重なる男の子を包み込んでいるやわらかなにじみは、ちひろの母としての愛情にも感じられます。