1963年7月7日、ちひろは旧ソビエトへの旅程で、ポーランドに隣接するキエフに滞在します。東欧最古の都市としての歴史を持ち、「ロシアのパリ」と呼ばれる街の印象を、「ソヴィエトで一番美しい町といわれているキエフにまいりました。町というものがこんなにきれいにできているなんて思いがけないことでした」と記しています。街角で見かけたベンチで憩う老人たちの姿を、ちひろは愛情のこもったまなざしで素早くスケッチに描きとめました。背中合わせの二人を中心にして、一人ひとりの表情や仕草をいきいきととらえた画面からは、四人の人間模様が垣間見え、会話までもが聞こえてきそうです。