いわさきちひろ 人と作品

いわさきちひろは子どもを生涯のテーマとして描き続けた画家でした。
モデルなしで10カ月と1歳のあかちゃんを描き分けたちひろは、その観察力とデッサン力を駆使して、子どものあらゆる姿を描き出しています。


「小さい子どもがきゅっとさわるでしょ、あの握力の強さはとてもうれしいですね。
あんなぽちゃぽちゃの手からあの強さが出てくるんですから。
そういう動きは、ただ観察してスケッチだけしていても描けない。
ターッと走ってきてパタッと飛びついてくるでしょ、あの感じなんてすてきです。」(いわさきちひろ)

ちひろの描く子どもたちは、母親として子育てをしながら、20年余りも子どものスケッチを積み重ねるなかで生まれてきました。

『おふろでちゃぷちゃぷ』より 1971年


たてひざの少年 1970年
ちひろが描いた子どもは、絵の中でさまざまなことを感じ、考えている生きた子どもとして存在しているように見えます。

「子どものことを描いていると、自分の小さいときのことを自分で描いているという感じがします。」(いわさきちひろ)

絵の中の少女は、ちひろ自身だったのかもしれません。

あかちゃんのくるひ
1969年

一方、ちひろは西洋で発達した水彩画に、中国や日本の伝統的な水墨画の技法を生かして、独特の水彩画を生み出しています。
この繊細で流動感のある水彩画の背景には、若いときに習熟した藤原行成流の和仮名が生きています。
優れた技術に、母親としての愛情と、みずみずしい感受性が融合したところに、ちひろの作品が生まれたといえるでしょう。

緑の風のなかで 1973年


チューリップとあかちゃん
1971年
透明でやさしい色彩につつまれた、ちひろの描いた子どもたちは、生命の大切さを語りかけています。
軍靴の音が迫るなかで少女時代を過ごし、戦争の最中に青春を生きたちひろが、絵筆にたくして描き続けたものは、彼女の残した言葉世界中の子ども みんなに平和としあわせをに象徴されているでしょう。
ちひろ美術館は、そんなちひろの心を大切にしています。