ちひろの願い

世界中のこどもみんなに 平和と しあわせを

「青春時代のあの若々しい希望を何もかもうち砕いてしまう戦争体験があったことが、私の生き方を大きく方向づけているんだと思います。平和で、豊かで、美しく、可愛いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます。」

いわさきちひろ 1972年

娘時代を戦時下に過ごしたちひろは、子どもたちの夢や希望、生命をも奪う、戦争の悲惨な現実を目の当たりにします。そして、戦争では、一番弱いものが犠牲になると痛感しました。

戦後、絵本画家として自立したちひろは、一人の子どもの母親となります。母となった気持ちを、「うしおのように流れ出す愛情を、どうしようもなくて」と表現したちひろ。そのまなざしは、わが子だけではなく、世界の子どもたちに向けられるようになります。

1960年代から70年代前半、ベトナム戦争が激化していくなかで、ちひろは戦争をテーマにした絵本を手がけます。ちひろは、戦争の悲惨さや残虐さを直接表現した絵ではなく、戦争のなかで生きる子どもの、懸命な姿や、未来を失い絶望した表情を描きます。そこには、かけがえのない命や平和の大切さ、それを守りたいというちひろの切実な思いがありました。

あどけないあかちゃん、生命力に満ちた子ども、そして戦禍のなかで生きることを余儀なくされた子ども。ちひろが未来の、そして平和の象徴として描いた子どもたちひとりひとりに、「世界中のこども みんなに 平和としあわせを」という願いが込められています。