ちひろの言葉

おしゃれ

ローランサン(※)と思い出の白いドレス

少女雑誌の口絵かなんかで、はじめてローランサンの絵を見たときには、本当におどろいた。どうしてこの人は私の好きな色ばかりでこんなにやさしい絵を描くのだろうかと。
それから私が一ばん好きだった洋服を思い出す。白いボイルの地に白いレースがついていた。ベルトは繻子織りのももいろのリボンで、うしろでむすぶようになっていた。母のお友達がはるばるフランスから送ってくださったのだ。町営住宅の小さな家に、この洋服は白鳥のように優雅におりたって私をどんなにしあわせにしてくれたことか。ローランサンの描く少女の風情とこの洋服は私の思い出のなかでダブっている。こがらな私が小学二年までしかきられなかった、ちいさな洋服だった。

「随筆サンケイ」(サンケイ新聞社出版局)1970年6月号 より

※マリー・ローランサン(1883-1956):20世紀のパリで活躍したフランスの女性画家