<企画展>―はじめてみる、ちひろの世界。― 
いわさきちひろ×佐藤卓=展

期 間 2015年7月17日(金)~9月23日(水・祝)
場 所 展示室1・2、多目的ギャラリーほか
主 催 ちひろ美術館
協 力 佐藤卓デザイン事務所、㈱ライティング プランナーズ アソシエーツ
後 援 絵本学会、こどもの本WAVE、(公社)全国学校図書館協議会、(公社)日本グラフィックデザイナー協会、(一社)日本国際児童図書評議会、日本児童図書出版協会、(公社)日本図書館協会、長野県教育委員会、松川村教育委員会
現代を代表するグラフィックデザイナー・佐藤卓。彼が最初に手掛けたちひろ美術館の仕事は、1997年の安曇野ちひろ美術館開館にあわせてデザインしたシンボルマークでした。以後、ちひろ美術館のさまざまな印刷媒体や商品を手掛け、ちひろの繊細な世界を大切にしながら、その絵を生かすデザインとはどういうものかの方向性を示してきました。佐藤卓は、今、ちひろの絵を最も多くみているデザイナーといえるでしょう。
本展は、そんな佐藤卓が「はじめてみる、ちひろの世界」を開こうとプロデュースした展覧会です。佐藤のデザインを紹介する「佐藤卓のデザイン採集」、ちひろの絵の新しい見方を提示する「佐藤卓が選んだ、ちひろの絵」のほか、ちひろの絵を素材に佐藤卓が実験的な試みを行った「いわさきちひろ×佐藤卓」のコラボレーション作品も展示します。

佐藤卓のデザイン採集

私たちの身近に大量に流通する商品として存在する佐藤卓のデザインを、昆虫を捕まえて標本箱に入れる昆虫採集のように、特製の箱に入れてみせる試みが「デザイン採集」です。おなじみの「ロッテ キシリトールガム」「S&Bブラックペッパー」などが、箱に入り照明を当てて展示され、見られる対象となったとき、初めてデザインが意識的に見えてきます。佐藤は「デザインとは、それ自体や美しさが目的なのではなく、何かと何かをつなぐもの」という考え方のもと、商品の本質を見極めて、情報を整理し、その魅力を人に伝えるデザインを考え続けてきました。ここでは、それぞれの商品を佐藤がどのように考え、デザインしたか、その考え方の過程についても彼自身のことばで紹介します。また、「明治おいしい牛乳」や、銘菓「チロリアン」など、自分でデザインしたものを巨大化した立体作品も展示します。

図1:佐藤卓 明治おいしい牛乳 2001年、図2:佐藤卓 チロリアン五人衆・立体 2006年、図3:佐藤卓 デザインの解剖=明治おいしい牛乳

佐藤卓が選んだ、ちひろの絵
―ちひろが描いた線画―

本展では、ちひろの作品を佐藤卓がもう一度見直し、その絵の本質的なテーマはなにかを探りました。佐藤が目を留めたのは、これまで展示される機会があまりなかったスケッチです。完成を求めずになにげなく引いた線が、いきいきとしていることに興味をひかれたといいます。佐藤は、次のように語っています。
「すごいデッサン力なんですよ。鉛筆が道具というよりも手の延長線上にあるわけです。ことばがぽろっと出てしまうように、自分の感じたことが、線になってしまうのですね。スケッチというのは、完成させたり人に見せることを考えず、どんどん描いていくものです。そこにちひろの本質的なものが見え隠れしているなという気がしたのです。」
佐藤はよく知られた代表作や、デッサン力の際立つ子ども像などをあえて加えず、鉛筆や割り箸ペンによる線の多彩な「線」に、鑑賞者が集中できる展示空間をつくり出します。
図4:いわさきちひろ ブランコと子どもたち 1971年、図5:いわさきちひろ 葛温泉・高瀬川で遊ぶ子どもたち 1956年

いわさきちひろ×佐藤卓の実験室

ちひろが絵を描いたときからおよそ半世紀。印刷美術の画家だったちひろの絵は、描かれた当初には絵本や広告、挿し絵などそれぞれの目的をもっていましたが、長い年月の間に、彼女の意図を超えた広がりを見せてきました。
佐藤は、そんなちひろの絵のもつ可能性を、もっと自由に引き出す「いわさきちひろ×佐藤卓」の実験に取り組みました。
その答えのひとつが「いわさきちひろ×佐藤卓=バナー」。ちひろの線画から、佐藤卓が線を取り出して、パターンデザインにしたものです。岩やブランコ、家並み、草木などを描いた絵の線だけを切り離し、拡大や回転、連続などの操作をして、あるリズムと無限の広がりをもった新たな表現へと生まれ変わらせています。
図6:いわさきちひろ×佐藤卓=バナー 2014年
もうひとつの「いわさきちひろ×佐藤卓=箱」は、ちひろの絵を、「箱」という三次元の空間に入れた作品です。箱の奥にちひろの絵を置き、その前には、佐藤が絵からインスパイアされた「もの」が置かれています。人は知っていると思うとよく見ようとしなくなりますが、なにかわからないことがあるときには、じっくりと見て、考えます。この箱を見る人は、ちひろの絵と置かれたものとの関係を考え、絵だけのときとはまた違う、さまざまな思考をめぐらすことになるでしょう。この箱は、ちひろの絵を全く新しい視点から見つめ直す仕掛けともいえます。
図7:いわさきちひろ ひまわりとあかちゃん 1971年、図8:いわさきちひろ×佐藤 卓=箱 2014年
「絵が描かれたのはかつてであっても、絵は普遍なわけですから、実は常に人との関係のなかで変化しながら、その時代に生きています。これからまた10年、20年先に、ちひろの絵が新鮮に見えてくるにはどんな見方、伝え方をしたらいいのか。そこにデザインが役にたつのではと思って試行錯誤しました。」と佐藤はいいます。また、「変えてはいけないことを大切にすると共に、常に変化を恐れないということも大切だと思うのです。」とも。時代を超えて親しまれてきたちひろの絵に対する既成概念を取り払い、新鮮な見方を提示する、佐藤卓の実験的な試みをご覧ください。
※図1、2、6、8は2014年にちひろ美術館・東京で開催された展覧会での写真です。

佐藤卓

佐藤 卓 Taku Sato
1979年東京芸術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」等の商品デザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「クリンスイ」のグランドデザイン、「武蔵野美術大学 美術館・図書館」のロゴ、サイン及びファニチャーデザインを手掛ける。また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」の企画メンバー及びアートディレクター・「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務める。

関連イベント

いわさきちひろ×佐藤 卓=展ワークショップ

展覧会に関連し、ちひろの絵とコラボレーションするワークショップを開催。期間中、中学生ボランティアによる、安曇野ちひろ美術館ガイドツアーも行います。

  • ○中学生ボランティアによる ちひろの絵と箱(ハコ)ラボレーション
  • 箱を立体キャンバスに見立て、ちひろの絵と「何か」を組み合わせた、コラボレーション作品をつくります。
  • 7月29日(水)~8月16日(日)
  • 参加費:500円(入館料別)
  • 定員:1日3回 各回10名(先着順)
  • ○ちひろの線とコラボレーション
  • 佐藤卓が選んだちひろの「線」をもとに、自由に描いてみましょう!
    投稿作品のなかから選ばれた作品を、美術館に展示します。
  • 7月17日(金)~9月23日(水・祝)
  • 参加費:無料(入館料別)

ギャラリートーク

  • 展示室で作品を見ながら、担当学芸員が展示のみどころなどをお話しします。
  • 日程:7/25(土)・8/8(土)・8/22(土)・9/12(土)
  • 時間:14:00~14:30
  • 申込:参加自由(事前申込不要)
  • 料金:無料(入館料別)
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