ちひろ没後40年
ちひろの絵本づくり -表現の可能性を求めて-

期 間 2014年9月19日(金)~11月30日(日)
場所 展示室1・2
「童画は、けしてただの文の説明であってはならないと思う。その絵は、文で表現されたのと、まったくちがった面からの、独立したひとつのたいせつな芸術だと思うからです」と語ったちひろは、絵本表現の新たな可能性を追求し続け、生涯に40冊もの絵本を残しました。本展では初期から晩年までの絵本作品の原画、制作過程での習作や資料などを展示し、ちひろの絵本づくりの変遷をたどります。

絵本画家としての出発点

最初の絵本の仕事は、1957年に福音館書店の月刊絵本「こどものとも」として出版された『ひとりでできるよ』でした。幼児の日常生活をテーマにした絵本で、ちひろは主人公の男の子に当時5歳だった息子の姿を重ねながら、子どもの仕草をいきいきと描いています。この絵本は評判を呼び、子どもが描ける絵本画家としての評価が高まります。
顔を洗う男の子 『ひとりでできるよ』(福音館書店)より 1956年

物語絵本

1965年の『りゅうのめのなみだ』で、ちひろは初めて本格的な物語絵本に取り組みます。龍が住む山奥を描くために、長野県北安曇郡の小谷温泉に逗留し、画面にそこでのスケッチを生かしました。丁寧な自然描写からは、物語の舞台を生きたものにしようとするちひろの気概がうかがえます。
晩年に近い1972年の『ひさの星』では表現方法が大きく変化しています。川で溺れた子どもを助け、自らは濁流にのまれてしまう少女ひさの物語のなかで、ちひろは村人の悲しみや絶望を、闇を見つめる男の後ろ姿で象徴的に表現しています。説明的な描写を極力抑え、心情を暗示することに重きをおいた表現は、この間の絵本制作の模索のなかで培われたものでした。

山道を行く男の子 『りゅうのめのなみだ』(偕成社)より 1965年 闇を見つめる村人 『ひさの星』(岩崎書店)より 1972年

絵で展開する絵本

1968年、ちひろは至光社の編集者・武市八十雄と組んで、『あめのひのおるすばん』の制作に着手します。ちひろが文も手掛けた初の自作絵本で、先に物語があって絵をつけていく従来の方法とは異なり、“雨の日”と“お留守番”から浮かび上がるイメージをもとに絵を描き、後から短いことばをつけるという手法がとられました。「窓ガラスに絵をかく少女」では、紫色の水彩の潤んだ画面が、少女の不安な心情を醸し出しています。武市は、ちひろとこの制作を通して「感じ感じさせることに集中」することを確認し合ったといいます。少女の微妙な心の揺れを主題に、ちひろは至光社から計6冊を出版し、独自の絵本づくりを追求した同シリーズは、絵本の新たな可能性を示す画期的な作品となりました。
窓ガラスに絵をかく少女 『あめのひのおるすばん』(至光社)より 1968年
1973年、激化するベトナム戦争への抗議の気持ちを込めて、岩崎書店から『戦火のなかの子どもたち』を発表します。病をおして1年半を費やし、戦火を生きるベトナムの子どもの姿と、自らの空襲体験も重ねながら、50点もの絵を描き上げました。最初に1点1点を独立した作品として仕上げ、絵が完成した後に並びと絵につけることばを検討していきました。19点の絵と子どもに寄り添う短いことばを編んだ詩画集のような絵本は、ちひろ独自の絵本表現の集大成ともいえる仕事で、生前に完成させた最後の絵本となりました。

少年と鉄条網 『戦火のなかの子どもたち』(岩崎書店)より
展示品数 約70点

関連イベント

ギャラリートーク

展示室で作品を見ながら、担当学芸員が展示のみどころなどをお話しします。
  • 日程 : 9/27(土)・10/11(土)・10/25(土)・11/8(土)・11/22(土)
  • 時間 : 14:00~14:30
  • 申込 : 参加自由(事前申込不要)
  • 料金 : 無料(入館料別)



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