ちひろ美術館コレクション
世界の画家たちの愛したアンデルセンと宮沢賢治

期 間 2014年5月16日(金)~7月22日(火)
場 所 展示室3
時代も国境も超えて多くの人々に愛される童話を残したアンデルセンと宮沢賢治。多くの画家が彼らの童話の絵本化に挑んできました。本展では、世界の絵本画家が描いた二人の童話の作品を紹介します。

アンデルセン

「おやゆびひめ」は、花から生まれた小さな女の子の物語です。キセロヴァーは、この童話について、「気づかれないほど小さく無防備、しかし、とても勇敢。このことは私にとっても驚きです」と語っています。画家は、おやゆびひめを動植物よりも大変小さく描くことで、幻想的な世界を表す一方、東欧の衣装を着た普通の女の子の姿で表しました。ファンタジーの世界のなかに、人間の心の機微や人の世の真実を描いたアンデルセン童話を、キセロヴァーは、運命に翻弄されながらも、たくましく生きる少女に焦点を当て、描いていたことがわかります。
『おやゆびひめ』より ヤナ・キセロヴァー・シテコヴァー(スロヴァキア)2001年

宮沢賢治

「セロひきのゴーシュ」は、町の楽団に所属する青年の物語。茂田井武は、最晩年に賢治のこの物語を絵本に描きました。当時、病床にあった茂田井でしたが、編集者からの絵本化の依頼に、「賢治のゴーシュでしょう。それが出来るなら、ぼくは死んでもいいですよ」と答えました。茂田井は、親友の画家が作った茂田井自身がモデルの人形にゴーシュの姿を見出し、さまざまなポーズを取らせながら、ゴーシュのイメージを掴んだといいます。茂田井の描いたデフォルメされたゴーシュの姿は、孤独を抱え、不器用に生きるゴーシュの姿を豊かに表しています。
『セロひきのゴーシュ』より 茂田井武(日本)1956年
茂田井の『セロひきのゴーシュ』を見て、絵本画家への道を歩んだ赤羽末吉にとっても、賢治童話は思い入れの深い題材でした。吹雪の一夜を描いた『水仙月の四日』は、絵と文が響きあう絵本表現の可能性を追求したいと、それまでにない技法に取り組んだ作品です。雪国の冷たく深い空を表現するために、銀箔を下地に使い、童話のもつ硬質な詩情を表すためにボールペンの線を使うなど、さまざまな画材を駆使し、賢治の作品のシャープさと硬質な質感を描き出しています。
二人の美しい物語と響きあう、画家たちの個性豊かな作品をお楽しみください。

ユゼフ・ヴィルコン『魔法の森』より1985年
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