ちひろ美術館コレクション
絵本・のりもの博覧会

期 間 2014年3月1日(土)~2014年5月13日(火)
場 所 展示室3、4
電車、自動車、飛行機、船……。絵本のなかには、たくさんの乗り物が描かれています。本展では、“乗り物”に焦点をあて、「陸の乗り物」「空の乗り物」「水の乗り物」をテーマに、作品を紹介します。

陸の乗り物

"乗り物"と聞いてまず思い浮かべるのは、地下鉄やバスなど、生活に密着した陸の乗り物ではないでしょうか。 絵本では、実生活では見られないユニークな電車が楽しめます。周囲の景色を眺められるドーナツ電車や3階建ての電車など、井上洋介の『でんしゃえほん』には、「この電車に乗ってみたい!」と、大人も子どもも目を輝かせるような、愉快な電車が次々に登場します。
西村繁男の『がたごとがたごと』では、ありふれた駅を出発した電車が時空を越え、想像もつかない世界に到着します。「おくやま駅」で電車から降りてくる、洋服を着た動物たちは、乗車したときには人間でした。人間から動物に変化しても、洋服や持ち物はそのまま。見比べることで、楽しさが増す絵本です。

西村繁男『がたごとがたごと』(童心社)より1999年
電車や車が発明される以前、馬などの動物や駕篭(かご)、馬車が人々の移動手段でした。赤羽末吉の絵本『春のわかれ』は、今昔物語をもとにした作品です。貴重な硯を割ってしまった青年の罪をかぶり、屋敷から追放された若君が、乳母の家まで牛車で移動する場面を、赤羽は重ねた和紙に日本画顔料を使って描いています。小さく描かれた牛車が霞がかった道を進む様子からは、若君の不安な気持ちが伝わってきます。
赤羽末吉『春のわかれ』(偕成社)より1979年

空の乗り物

絵本には、飛行機や飛行船、ロケットのほか、“空想上の乗り物”も見られます。
詩集『魔法の森』に収められた、ロシアの詩人サーシャ・チョルニイの詩「夜な夜な」のためにユゼフ・ヴィルコンが描いた作品には、不思議な生き物を乗せ、波うちながら飛び立とうとするじゅうたんが登場します。薄手のじゅうたんの質感や、やわらかな毛足の長さが、パステルとガッシュで表現されています。
ユゼフ・ヴィルコン『魔法の森』より1985年

水の乗り物

海や湖など水上を移動する船は、人を乗せる旅客船や液体を運ぶタンカーなど、さまざまな仕事で、生活を支えています。
19世紀末、イギリスの作家R.L.スティーブンソンは、貨客船に乗って、ロンドンからニューヨークへ、大西洋を横断しました。彼の故郷への手紙をもとに、事実と空想を織り交ぜて、マーチン&アリス・プロベンセンが制作した『スティーブンソンのおかしなふねのたび』には、当時、貨客船として使われていた、帆を備えた蒸気船が描かれています。

ユゼフ・ヴィルコン『魔法の森』より1985年
ゴンドラは、ヴェネツィアで何世紀にもわたり主な交通手段として使われ、今も観光タクシーや渡し舟として活躍する乗り物です。フレデリック・クレマンは、イタリアを舞台にした『ヴェニスの楽器職人』に、複数のゴンドラが空を飛ぶ幻想的な場面を描いています。
絵本のなかの乗り物をとおして、文明の変遷、その地域特有の自然環境や風土をみることができます。身近な乗り物から不思議な乗り物まで、絵本画家が描いた、魅力あふれる“乗り物”の数々をお楽しみください。 
ユゼフ・ヴィルコン『魔法の森』より1985年
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