<企画展>色の音 紙の詩 クヴィエタ・パツォウスカー展

期 間 2013年7月12日(金)~2013年9月17日(火)
場 所 展示室4
安曇野ちひろ美術館における2001年の展覧会以来、日本で12年ぶりのクヴィエタ・パツォウスカー展となる本企画展では、新たに80点もの作品を画家自身から借用し、展示します。
パツォウスカーは、個展や本のイラストレーションを1960年代から始め、1980年代からは国内のみならず、海外でも注目されるようになりました。1990年代からは本の出版は海外の出版社からが中心となり、展示は母国のチェコのみならず、ドイツ、フランス、イタリア、メキシコ、台湾、韓国と、世界各地で行なわれています。
絵本、グラフィック作品、立体作品など、扱うジャンルも幅広い彼女にとって、本は制作の初期から現在に至るまで常に新しい表現を探しながらも継続してつくり続けているものです。「絵本は子どもにとっての最初の美術館」と語り、美しく楽しく工夫をこらしながら本の可能性を毎回広げているパツォウスカーは、国を超えて多くの読者の手元へ届く、「小さな美術館」を大切にしています。
本展では、85歳となる今もなお、創作を続ける彼女が絵本のために描いた1985年の『すずの兵隊』から、2010年の“Couleurs du Jour ”まで、9冊の絵本の原画や紙の彫刻を中心に紹介します。

パツォウスカー スタジオポートレート

色の音

パツォウスカの絵や絵本を一度見た人は、そこにあふれる鮮やかな色と色の組み合わせを記憶することでしょう。「色、それは、音楽のようなもの。ひとつずつでもすばらしいけれど、決められたつながりでもすばらしい。」と本人は語っています。このように、色と音楽を重ねて表現した画家は、少なくなく、例えばカンディンスキーは絵画がめざすべき姿を音楽に仮託したり、色彩を音響とのアナロジーにおいて語ったことで知られています。
赤、黒、緑、などの色を組み合わせることにより、パツォウスカーは独自の音楽を生み出しています。
「七色のオペラ」は、絵本のための作品ではなく、連作の一つですが、大きな楽譜を思わせる、うすく五線がプリントされた画面いっぱいに、赤、黄色、青、ピンクと、7,8色のクレヨンで丸やうずまき、点や線が散りばめられています。普通の楽譜のように黒い音符が、行儀よく五線の決まった場所に並ぶのではなく、自由に五線の間を色が飛びはね、まるで子どもたちが楽しく遊びまわっているようにも見えます。「色が集まってグループになると、新しい広がりをつくり、和音をつくり、不協和音をつくり、交響曲をつくり、オペラをつくり、そして子どものための本をつくります。」というパツォウスカーの文章には、彼女の絵本づくりの真髄がこめられています。
七色のオペラ 1989年

紙のおしゃべり

パツォウスカーの作品は、平面にとどまりません。「本は私にとっては建築。閉じられた空間に、描いたり、書いたり、そして何も無いページを作ったりするのです。」と語っています。
1990年の『ふしぎなかず』(ほるぷ出版、絶版)は、一般読者が手に取れる、パツオゥスカー初めての、しかけ絵本で、1から10までの数字を動物や道化師が絵と図形で語ります。穴から次のページの絵が見えたり、小さな扉を開くことができたり、銀色の紙が鏡のように貼ってあったり、とページごとにたくさんの遊びが含まれています。 以後、彼女のつくる本の多くには、ページの2次元を3次元にする工夫が現れます。
紙の世界は本にとどまらず、彼女が彫刻と呼ぶ、小さな立体作品にまで及びます。「黄色い鉛筆のある像」は、白い厚紙に彩色がほどこされたものですが、短い黄色い色鉛筆が、ユーモアと緊張感を生み出しています。これらの小さな紙の彫刻や作品からストーリーを作ったのが、ちひろ美術館コレクション絵本『紙の町のおはなし』(小学館 2000年)です。紙の町の中で、主人公の女の子がさまざまなおもしろい形をした住民(紙の彫刻)に出会う、という設定は、紙を含めるあらゆるものにいのちを見出す、パツォウスカー独自のアニミズムを感じさせます。
黄色い色鉛筆のある像 1988年

『あかあかサイ』Rotrothorn

絵本Rotrothorn(未邦訳、Ravensburg刊 1999年)は、日曜日から土曜日まで、語り手の「お絵描きこびと」がつくったり、描いたりしたさまざまな色や柄のサイが登場する本です。紙と絵の具で新たなサイやものを描いては友だちになっていく、ほとんど姿を見せない語り手のこびとと作者がどこか重なります。
「チェックサイ」には、パツォウスカーがよく用いる赤も含まれていますが、同じ赤色でも画材や描き方が異なっています。チェックの四角も決して滑らかにつながっておらず、少しずれたり、色がはみ出しているようすが、感覚的です。「水玉サイ」は、明るい黄色の地に赤と緑と黒の円が所狭しに塗ったり貼ったりされており、どこか子どものいたずら描きを彷彿とさせます。絵本の最後には読者も自分のサイを描いたりつくったりすることを薦めており、創作の喜びがつまった本です。
チェックサイ 1999年 水玉サイ 1999年

『日々の色』Couleurs du Jour

2010年にフランスで出版された、アートブックともいえる「日々の色」Couleurs du Jour (Editions des Grandes Personnes 2010年)は大きさが13㌢四方、厚さは6㌢と小ぶりですが、開くと全長10メートルの絵本。168ページもの絵がつながります。
「私は、色をそのトーンや、それぞれがもつ音によって選びました。 月曜日は緑、火曜日は青、水曜日はオレンジ、木曜日はピンク、金曜日はシナモン色、土曜日は茶色、そして日曜日は黄色い耳をもっている。これが、私が10歳だったころ想像していた、それぞれの日の色です。そのとき他の人は誰も曜日の色を知らないので、驚きました。」と彼女は前書きに書いています。ページをめくると、図形や不思議な生き物や、色が現れては次へとつながっていきます。三角にくりぬかれたページ、うずまきのあるページ、切り込みのあるページ。本に言葉らしい言葉はなく、どこが始まりで、どこが終わりかもはっきりとしません。読者は一度ではなく、何度も繰り返し手にとって、ページを行ったり来たりしながら、時と色と空間の世界に入り込んでいきます。
パツォウスカーの本と作品のもつ遊びや感覚性は、バーチャルリアリティーがあふれる現代が失いつつあるものを教えてくれるようです。本展は2014年春にちひろ美術館・東京に巡回する予定。

Couleurs du Jour『日々の色』より 2010年

出展作品数 80点

クヴィエタ・パツォウスカー Kvĕta Pacovskà( 1928~)
プラハに生まれる。父はオペラ歌手、母は外国語教師。本と絵と音楽に囲まれて子ども時代を過ごすが、ナチスの台頭によりユダヤ人の父が殺され、13歳から4年間は学校に通えなかった。戦後プラハ美術学校で、エミール・フィラの元で応用美術を学ぶ。鋭敏な色感と自由な発想で、絵本のほか、グラフィックや立体作品の制作も多い。1992年国際アンデルセン賞画家賞など国際的な賞の受賞多数。プラハ在住。

関連イベント

ギャラリートーク

  • 日  程 : 7/13(土)、7/27(土)、8/10(土)、8/24(土)、9/14(土)
  • 時  間 : 14:30~15:00
  • 場  所 : 展示室4
  • 申  込 : 参加自由(事前申し込み不要)
  • 料  金 : 無料(入館料別)

夏休み体験コーナー
パツォウスカーワークショップ

  • 日  程 : 7/27(土)~8/17(土)
  • 場  所 : 多目的ギャラリー
  • 申  込 : 当日会場にて要予約。定員制。
  • 料  金 : 材料費100円(入館料別)

パツォウスカー探検ツアー

  • 日  程 : 7/27(土)~8/17(土)
  • 時  間 : 13:00~13:30
  • 会  場 : 安曇野ちひろ公園~展示室4
  • 申  込 : 当日館内にて受付。定員制(20名)。
  • 料  金 : 無料(入館料別)
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