ちひろになれる! 7つの法則 -技法徹底解剖-

期 間 2013年7月15日(月)~9月17日(水)
場 所 展示室1・2
やわらかな色彩と確かなデッサン力で、子どもをテーマに描き続けたいわさきちひろ。その絵は、なにげなく描かれているように見えて、実は、さまざまな技法や工夫が隠されています。本展では、ちひろの代表的な技法を7つの視点から徹底解剖し、その絵の魅力を探ります。

法則その1―水を使いこなす

透明水彩絵の具には“水に溶ける”という特性があります。ちひろは、水の量や塗り方を工夫することで、この特性を巧みに自らの表現へと取り込みました。
後期の水彩画の最も魅力的な表現の1つである「にじみ」。筆にたっぷりと水を含ませて描くと、水とともに絵の具が広がり、微妙な濃淡が現れます。その絵の具が乾く前に別の色をおくと、色が混ざり合い、複雑な色調が生まれます。「貝と赤い帽子の少年」の背景には、青や黄色、紫など、さまざまな色のにじみにより、浜辺にも、海のなかにも感じられる幻想的な風景が描き出されています。

法則その2―構図の工夫「大きさを変える」

日本画には、手前に物を大きく配置し、奥に描かれたものをのぞき見る構図が多く見られます。ちひろは、この構図を好んで用いるとともに、物の大きさを自由に変え、装飾的に配置して描きました。
「ききょうと子どもたち」では、子どもたちのまわりを、大きなききょうの花が取り囲んできます。現実の見え方にとらわれず、大胆な発想で描くことも、ちひろの特徴的な技法の一つといえます。

ききょうと子どもたち 1967年

法則その3-かわいさのひみつ

やわらかな髪、黒目がちの瞳、ぽちゃぽちゃした手……。自らも息子を持つ一人の母親だったちひろは、小さな命を慈しむように、子どもたちの仕草や表情を描きました。そこには、ちひろならではの子どものバランスや特徴が見られます。
「お姉さんとあかちゃん」の二人は、幼い子どもに共通する顔の特徴が強調して描かれています。つぶらな瞳、小さな鼻、丸い顔……、そして、両目とあごの先を結ぶと正三角形になるように配置されたバランス。これは誰もがかわいいと感じる黄金比率かもしれません。繰り返し描き、「子ども」のイメージを追求するなかで、ちひろは独自の子どもの顔のバランスを確立させていきました。
お姉さんとあかちゃん 1971年

法則その4―色でもひと工夫

色には、色と色との組み合わせにより、見え方が変わるという特徴があります。
ちひろの絵の配色に着目すると、補色(*)を効果的に用いた作品が多く見られます。
「黄色い傘の少女」に使われている、傘の黄色と長靴の紫も補色の関係にある色の一つです。長靴を手で隠すと、少しもの足りない印象になるでしょう。限られた色数でも、画面全体の色のバランスと見え方を考え、ワンポイントの差し色を効果的に登場させています。

*補色-互いに引き立て合う2色の色同士のこと
黄色い傘の少女 1969年

法則その5―“引き算”で描く

1970年頃から、ちひろは世阿弥の能芸論書である「風姿花伝」を愛読し、とくに「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」という部分に共感していました。 抑制された演技のほうが、より深い感銘を与えることと解釈したちひろは、説明的な要素をできるだけ省略する表現を目指しました。ちひろはこの考え方を「引き算」と呼んでいました。
「あごに手をおく少女」は、少女の顔と手が極限まで簡略化された作品です。白地のなかに、顔と髪、手の一部のみが描かれ、眉毛も顔の輪郭も、手の甲の線も描かれていません。引き算で描いたこの作品には、見るものの想像や記憶を重ねる余地が残されています。
あごに手をおく少女 1970年

法則その6―鉛筆を使いこなす

「雪のなかで」は、ちひろの線の魅力が凝縮された作品です。子どもの横顔は、鉛筆を立てたシャープな線で、フードは、鉛筆を寝かせた太くやわらかなタッチの線を使って描かれています。
第二次世界大戦後、画家を目指して上京したちひろは、当時、師事していた丸木俊(当時は赤松俊子)から、自分が引く一本の線にも責任を持つという考え方を学びました。その後も、数多くのデッサンやスケッチを描き続け、線の表現を追求したことが、巧みな線描を生み出す礎となったのでしょう。後期の作品には、筆勢や筆圧、鉛筆の角度を自由自在に駆使した、表情豊かな線が登場しています。
雪のなかで

法則その7―愛するものをモチーフに

ちひろの絵の魅力は、卓越した技法であるとともに、そこに込められた母としての限りない愛情にあるといえます。
ちひろは32歳のときに、一人息子をもうけました。その喜びを、「うしおのように流れだす愛情を、どうしようもなくて」と振り返っています。
母性の画家とも呼ばれるちひろは、生涯「子ども」をテーマとして描き続けました。晩年には、「世界中のこどもみんなに平和としあわせを」という言葉を残しています。ちひろが描き出した全ての作品には、戦争体験を経て強く願った平和への思いと、世界中の子どもたちに向けた母としての愛情が込められています。
7つの法則から、ちひろの作品の根底にある巧みな技法の数々を再発見していただければ幸いです。

出展作品数 35点

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  • 場  所 : 展示室1
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