ちひろ美術館コレクション 絵本のつくり方

期 間 2013年5月10日(金)~2013年7月9日(日)
場 所 展示室4
0歳から100歳を越える人まで、誰もが楽しむことのできる絵本。本展では「絵本づくり」に焦点を当て、4つの視点から絵本の魅力を探ります。

赤羽末吉にみる絵本づくりのプロセス

日本人で初めて国際アンデルセン賞画家賞を受賞し、多くの優れた絵本を残した赤羽末吉。その作品は、物語について取材を重ね、絵本のダミーや下絵を描いた後に本描きを行い、完成させるという手順で制作されています。ここでは、膨大な下絵や4段階で試作されたダミーなど、数多くの資料が残る『ほしになったりゅうのきば』を通して、絵本づくりのプロセスを紹介します。

主人公の魅力

絵本の主人公は、読者が自身の視点や感覚、思いを投影させる存在であり、物語の進行を担う役割があります。
武田美穂の『となりのせきのますだくん』は、小学校に入学したばかりの少女・みほちゃんと、隣の席のますだくんを主人公に、気持ちのすれ違いや葛藤をユーモラスに描き出しながら、子どもの心の機微を伝える作品です。武田は、気弱で引っ込み思案なみほちゃんが感じるままのますだくんの姿を、「恐ろしい」「得体が知れない」といった怪獣のイメージに重ねて描きました。読者は、登場人物が怪獣の姿で描かれる意外な発想に惹きつけられるとともに、新生活や新しい人間関係への不安など、自らの体験を重ね、感情移入することができます。
となりのせきのますだくん

絵と文の調和

絵と文は、絵本を成立させる2つの大切な要素であり、絵本はこの2つが調和して物語を伝えます。
キアラ・ラパッチーニの『ねえ こっちむいて!』は、多忙な両親の気をひこうと、姉弟が作戦を練って両親をあれこれと困らせる物語です。子どもの言葉で語られる文が、現代的なデザイン感覚のポップな表現で、子どもの視点から大人を見上げた構図で描かれた絵とうまくマッチしています。親の子どもへの無関心という社会問題をテーマに、現代に生きる大人の現状と子どもの切実な思いを、ユーモラスに浮き彫りにしています。
谷内こうたの『なつのあさ』は、夏の朝、懸命に自転車を走らせて列車を見に行く少年の姿を詩情豊かに描いた作品です。簡略化された絵が物語を展開していくこの絵本では、文章による説明的な要素はなく、草原を吹く風や列車の走る音、つぶやくような少年の言葉が、絵本の世界をよりイメージ豊かに伝えています。
一方、絵と文の関係という視点では、クラウス・エンヅィカートの『4人の子ども、世界をまわる』は、文そのもののビジュアル化という点で、興味深い絵本です。カリグラフィー(西洋の伝統的なペン字)で描かれた文字が、銅版画のように細密に描かれた線画と融合し、美しい画面をつくりあげています。
4人の子ども、世界をまわる

展開の妙

絵本は、一場面一場面が連なり構成されています。ページをめくることで、時間が経過し、物語が展開していきます。
エフゲニー・ラチョフの『てぶくろ』は、おじいさんが森に忘れた手袋のなかに、動物が次々と住みついていく物語。小さかった手袋は、新たな動物が移り住むたびに、煙突やドアが付いて大きくなっていきます。画家は、新しい動物の登場と手袋の家が変化する様子を、同じ視点の場面展開で、わかりやすく魅力的に表現しています。
西巻茅子の『わたしのワンピース』は、空から落ちてきた白い布を使ってうさぎが仕立てたワンピースが、花畑を歩くと花模様に、雨が降ると雨模様に変化する物語です。ここでは、花畑の場面ではピンク、雨の場面では水色など、ページをめくると背景の色が変化し、心地よいリズムが生まれています。また、絵本の開きの方向と同じく、左から右へと主人公のうさぎは歩いていきますが、この流れから、うさぎの歩いていく方向に世界が広がり、次に起こる出来事に期待しながら読者はページをめくります。
この他、さまざまな画材や技法による個性あふれる画家たちの絵画表現とその魅力もご紹介します。
てぶくろ


展示品数 約100点

関連イベント

ギャラリートーク

  • 日  程 : 5/11(土)、5/25(土)、6/8(土)、6/22(土)
  • 時  間 : 14:30~15:00
  • 申  込 : 参加自由(事前申し込み不要)
  • 料  金 : 無料(入館料別)

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