<企画展>日中国交正常化40周年記念
中国の絵本画家展

期 間 2012年9月21日(金)~11月30日(金)
場 所 展示室4
後 援 中華人民共和国大使館文化部、日本中国友好協会、日中児童文学美術交流センター、絵本学会、(社)日本国際児童図書評議会、(公社)全国学校図書館協議会、日本児童図書出版協会
企画協力 (株)ポプラ社、北京蒲蒲蘭文化発展有限公司
協 力 (株)岩波書店、(株)コンセル、(株)小学館、(株)童心社、(株)徳間書店、光村教育図書(株)
日本は、古来より隣国中国から文化的にも多くの影響を受けてきました。戦後、欧米の刺激を受けつつ発展した日本の絵本のルーツは絵巻物ですが、中国の画巻がそのもとであることは、よく知られています。長い歴史と広い国土、多様な文化を持つ中国には、花鳥画、山水画、年画*1等、豊かな絵画表現があり、壁画や画巻などの「物語る絵」は、現代の絵本につながります。しかし、日本の侵略に端を発した抗日戦争*2、その後の内戦、文化大革命*3と混乱の時代が長く続いた20世紀、絵本というジャンルは日本のようには育ちませんでした。
近年、経済発展著しい中国では、欧米や日本の絵本が多く翻訳、出版され、年々絵本への関心が高まりつつあります。絵本という芸術表現に意欲的に取り組む国内の画家たちも徐々に増えています。
日中国交正常化40周年を記念する本展では、現代中国の絵本界を代表する7名の画家約60点の作品を展示します。画家たちの作品には、自国の伝統と文化を踏まえつつ、子どもたちに優れた絵本を伝えたいという熱い思いが感じられます。本展が日中両国間の今後の交流と絵本文化の発展の一端を担うことができれば幸いです。本展では、武建華、蔡皋、于大武、朱成梁、周翔、姚紅、熊亮の7名を紹介します。

武建華(ウー ヂェンホァ)

3頭身のユーモラスな登場人物たちが活躍する武建華の作品は、親しみやすく、ぬくもりを感じます。武は、幼い頃から泥人形づくりを好んでいたといいます。中国の民間美術のひとつ、泥人形は、シンプルで素朴な味わいが魅力です。武の作中の独創的な造形の原点といえるのかもしれません。
『天下一の弓使い』は、中国内陸部に住む少数民族ユーグ族に伝わる話。色鮮やかな衣装、姫の髪型、敷物の模様などは、実際の雰囲気を伝え、リアリティがあります。おおらかな画風のなかにも、武が綿密な調査をし、たしかな知識をもとに描いていることがわかります。
武建華 『天下一の弓使い』(小学館)より 1994年

蔡皋(ツァイ ガオ)

教員生活を経て、文化大革命後に出版社に美術編集者として入った蔡皋は、日本をはじめとする外国の絵本に接し、多くの刺激を受けたといいます。
『なみだでくずれた万里の長城』は、万里の長城の建設に駆り出された夫を亡くした孟姜女の悲しみの涙が、長城を崩したという伝説です。孟姜女が美しく成長する場面は、画巻にも見られる異時同図ですが、蔡皋は、コマ割という現代的な表現方法で描きました。茶やスモーキーピンクといった落ち着いた色彩の場面の一方、万里の長城にたどり着き、夫の死を知る場面では、悲劇を予感させる黒を効果的に用いています。変化のある大胆な構図や色彩は、蔡皋ならではの絵本づくりといえます。
蔡皋 『なみだでくずれた万里の長城』(岩波書店)より 2006-2010年

于大武(ユー ダーウー)

三国志演義や西遊記などなじみ深い古典を、工筆画*4という中国伝統の画法で精緻に描く于大武。本展では、新作『北京 中軸線上につくられたまち』を紹介します。北京城*5の南北を貫く中軸線*6上を、前門より進みながら、紫禁城*7をはじめ、清時代の北京城、そして現在、中軸線がさらに北に延び発展する北京の街を描いています。北京城の建造物の数々は、シャープな無駄のない線と柔らかな美しい色彩で画面中央の中軸線に対しきっちりと左右対称に描かれています。そこに人々の営みが細かく描きこまれることで、北京という都市の記憶が生き生きとしたものになっています。北京で生まれ育った于大武の、古き時代を受け継ぎ、発展を続ける街北京への愛情が息づいています。
于大武 『北京 中軸線上につくられたまち』(ポプラ社)より 2011-2012年
*1年画:民間絵画のひとつ。春節(旧正月)に門口やドア、室内に貼り、慶祝と邪気払いを願うもの。
*2抗日戦争:1931年9月柳条湖事件(満州事変)に始まる日本の侵略戦争に対する中国の抗戦。1945年8月日本の敗戦にて終結。
*3文化大革命1966−1976:毛沢東による権力・政治闘争。10年に渡る社会的混乱のなか、経済や文化活動が停滞した。
*4工筆画:輪郭線の上に色彩を載せ、写実的かつ細密に描く中国画の技法。
*5北京城:明・清朝時代(1368−1912)の都城。その基礎は、元朝時代(1271−1368)につくられ、周囲28.6キロの方形の城壁に囲まれ、大都と呼ばれた。
*6中軸線:紫禁城を中心に南北に一直線に貫く線。北京城はこの中軸線を中心に、建造物が配されている。
*7紫禁城:北京城の中央に築かれた明・清朝時代の皇帝の宮城。現在の故宮博物院。
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