ちひろ・和の心

期 間 2012年9月21日(金)~11月30日(金)
場 所 展示室1・2
古来より日本人は、花鳥風月に象徴される美しい自然を詩歌や絵画に表現してきました。ちひろもまた、四季折々の花や草木、小鳥や蝶、流れゆく雲や風、輝く月といった自然の風物を、その作品のなかに詩情豊かに描いています。
「秋草のなかの少女」は、晩秋の野を彩る秋草や枯れ葉が主役の作品です。少女の前景に描かれた枯れ葉は、深いこげ茶色を基調にしながら、紅葉の名残を思わせる鮮やかな赤や朱色、緑や紫といった色が複雑ににじみ込んでいます。枯れ葉の微妙な色合いにも、ちひろは秋から冬へと移ろいゆく季節の気配を感じていたのでしょう。秋草をみつめる少女の姿は、ちひろ自身と重なるようです。
秋草のなかの少女 1969年
自然をとらえる繊細な感覚とともに、ちひろの絵には造形的にも日本の伝統絵画に通じる面が見受けられます。秋草の向こうに月をとらえた構図は、琳派などの作品にも多く用いられたものですが、ちひろは実際よりはるかに大きく満月を描くことで、月を見上げる子どもたちの感動を伝えています。1960年代中頃の作品に顕著な、モチーフの大胆なクローズアップや装飾的な画面構成は、伝統的な草花図にも数多くの作例があり、日本的な装飾観を感じさせるものです。
十五夜の月 1965年 梅『万葉のうた』より
1970年頃よりちひろは、世阿弥の能芸論書「風姿花伝」を愛読するなど、日本の芸術思想に深い関心を寄せるようになります。若いときに修練した書の運筆も生かしながら、水彩のにじみや筆勢を駆使して伸びやかに対象をとらえた後期の水彩は、色のある水墨画とも評されます。余計なものをそぎ落とし、心象を一瞬の筆でとどめる描法や、「感じる」ことをより重視した晩年の制作姿勢には、能や俳句、水墨画など抑制した表現に、より豊かで奥深い美を見出す日本の伝統的な感受性が受け継がれています。
本展では、自然の風物を描いた代表作、日本の物語をテーマにした絵本『つるのおんがえし』『たけくらべ』『ひさの星』『赤い蝋燭と人魚』、水墨的な表現にも通じる『万葉のうた』の原画と書の作品などを展示し、ちひろの絵に息づく日本的な美意識を探ります。

展示品数 約50点
あやめ 1973年

関連イベント

ギャラリートーク

  • 日 程:9/22(土・祝)、10/13(土)、10/27(土)、11/10(土)、11/24(土)
  • 時 間:14:00~14:30
  • 申 込:参加自由
  • 料 金:無料(入館料のみ)
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