ちひろ・花の肖像

期 間 2012年5月11日(金)~7月10日(火)
場 所 展示室1・2
ちひろは、四季を彩る花々と子どもたちの姿を生涯にわたって描き続けました。水仙、すみれ、チューリップ、バラ、スイートピー、ききょう、シクラメン……その種類は、判別できるものだけでも80種を超えます。自らも庭でたくさんの草花や樹木を育て、花に囲まれて暮らしたちひろは、身近な花の一つひとつに生命の輝きを見出し、花それぞれの個性や印象を見事にとらえて表現しています。

「チューリップのなかの男の子」では、チューリップ、フリージア、ひなげし、スイートピー、しゃくなげなど、画面いっぱいに春の花があふれ、黄色いチューリップの間から男の子が顔をのぞかせています。うららかな陽射しのもと、いのちの息吹に満ちた春の庭の喜びが伝わってくるようです。ちひろは未発表の原稿のなかで「春の花にはしきりに蝶がきたり、蜂がきたりする。花のほのかな香りのなかにいると、にぶい蜂の羽音がきこえてくる。」と綴っています。大胆に花をクローズアップした絵からは、間近に花を見つめるちひろの姿が想像できます。庭仕事をしながら地面にしゃがみこみ、毎日のように花に触れていたちひろは、花の色や形だけでなく、その甘い香りや花びらの感触、蜜を吸いにくる虫の羽音や風のそよぎなど、あらゆる感覚を通して花を感じ、愛でたのでしょう。
手前に花を大きく描き、花陰や遠景から子どもがのぞく構図は、ちひろの作品に数多くみられるものです。花と子どもの実際の大きさの関係にとらわれない、巨大な花や装飾的な配置など、ちひろの自由で柔軟な発想がうかがえます。こうした花と子どもをモチーフにした装飾的な構図は1963年頃より顕著になり、花のコンポジションそのものを追究したような作品も残されています。
水の上で踊るふたり 『ふたりのぶとうかい』(学習研究社)より 1968年 藤の花と子ども 1970年
ありのままの花の姿を描くのではなく、装飾的な構図や大胆に画面を構成したものも多いなかで、ちひろの花の絵に不自然さを感じないのは、そのリアルな花びらの表現によるものでしょう。艶やかで厚みのあるチューリップ、光に透けるように薄いひなげし、しっとりと雨に濡れたようなあやめ、ちひろは花びらの質感をリアルに描写することで、その花らしさを表現しています。なかでも特に好んで描いたのがバラの花です。水彩のにじみを駆使して、肉厚でビロードのような質感を描いた作品をはじめ、鉛筆のやわらかな線描や、インクとペンによる線のカットなど、表現には豊かなバリエーションがみられます。
花のなかのおやゆび姫 1965年
ちひろが描く花の絵は、植物学的な正確さを追求したボタニカルアートとも、西洋における生のはかなさの寓意としての花の静物画とも異なります。花びらの感触や香りまでも感じるようなちひろの花は、みずみずしい生命感を宿しています。ときに花と子どものイメージを重ね、弱く美しいもの、いのちの象徴として、子どものもつ繊細でやわらかな心や内面を花に託して描いています。
花と子どもを描いた代表作、装飾的な構図や花だけを描いた作品のほか、花の妖精をテーマにした作品も展示します。花を愛し、慈しみ育てたちひろが描く「花の肖像」をご覧ください。

展示品数 約80点
蓮の花の精 1960年代後半
花の精 1970年頃

関連イベント

ギャラリートーク

  • 日 程:5/12(土)、5/26(土)、6/9(土)、6/23(土)
  • 時 間:14:00~14:30
  • 申 込:参加自由
  • 料 金:無料(入館料のみ)
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