ドキュメンタリ-映画公開記念展 ちひろ 27歳の旅立ち

期間 2012年3月1日(木)~5月8日(火)
場所 展示室1
大正から昭和の激動の時代を生き、絵本画家として活躍したいわさきちひろ。 本展では、初期のデッサンから最晩年の絵本作品までを一挙に展示し、画家として、女性として、まっすぐに生きたちひろの人生と画業の全貌を紹介します。
わらびを持つ少女 1972年

27歳の旅立ち ―自画像―

26歳の夏、ちひろは父・正勝の実家がある長野県梓川村で終戦を迎えました。
終戦の前年(1944年)、ちひろは女子開拓義勇隊の一行とともに満州へ渡ります。戦況が悪化の一途を辿るなか、現地の生活は想像を絶するものでした。ちひろは幸運にも帰国を果たしますが、ともに渡った女性たちのなかには、生きて再び日本に帰ることはなかった人たちもいました。翌年、空襲で中野の家を失ったちひろたち一家は、松本へと疎開します。
後年、ちひろは終戦の日を振り返り、「心のどこかがぬくぬく燃え、生きていく喜びがあふれだした」と語っています。生活も価値観も一変させた戦争体験を経て、ちひろの人生は大きく変化しました。終戦の翌年、父親の反対にあいながらも画家を目指して単身上京し、自らの力で人生を歩み始めます。この時代、女性が自立して生きること、しかも画家になることは大きな挑戦でした。その年の秋の自画像には、決意を胸に、強いまなざしで未来を見据える27歳のちひろの姿が描かれています。
自画像(27歳)1946年

飛躍の時 ―『あめのひのおるすばん』―

絵本『ひとりでできるよ』を描いた1956年には、小学館児童文化賞を受賞するなど、名実ともに画家として歩み始めたちひろは、1968年、至光社の編集者・武市八十雄氏とともに、“絵本にしかできないこと”をしようと、『あめのひのおるすばん』の制作に取り掛かります。この時期、「新しい、生きいきとした仕事がほんとうにしたい」と思っていたちひろは、描き上げた絵を斜めにしたり裏返したり、一度塗った色を洗い落とし、また色を重ねたり、時に迷いながらも、新鮮な驚きと喜びを持って大胆な実験に取り組みます。新たな手法を用いて、少女の繊細な心の揺れ動きを描き出したこの作品で、ちひろは表現における新境地を切り開いています。
そうじをする子ども 1956年 『ひとりでできるよ』より カーテンにかくれる少女 1968年 『あめのひのおるすばん』(至光社)より

平和への祈り ―『戦火のなかの子どもたち』―

「いましなければベトナムの人は、あの子どもたちはみんないなくなっちゃうんじゃないかと思って・・・・・・」。ベトナム戦争が激化するなか、ちひろは展覧会に出展した3点の絵をきっかけに、絵と短い文とでつづられた絵本『戦火のなかの子どもたち』を制作します。雨のなかに座り続ける少女、空虚な暗い瞳を見せる少年・・・・・・、すべての子が「夢をもった美しい子ども」に見えると語っていたちひろは、唯一、この絵本で、深い絶望と悲しみを背負った子どもたちの姿を描き出しました。説明的な言葉や描写を極限まで排除することで、生命を奪うだけでなく、人の心を蝕み、未来をも奪う戦争の現実を浮き彫りにしたこの作品は、ちひろの人生と、画家としての表現の集大成ともいえる絵本となりました。
母、妻、娘として家族を支えながら、画家として、絵本表現を追及し続けたちひろ。28年に及ぶ画業を辿るとき、戦争体験を経て強く願った“平和への思い”が浮かび上がってきます。
戦火のなかの少女 1972年 『戦火のなかの子どもたち』(岩崎書店)より

関連イベント

ギャラリートーク

  • 日 時:3/10(土)、3/24(土)、4/14(土)、4/28(土) 
  • 時 間:14:00~14:30
  • ※参加自由(事前申し込み不要)・無料(入館料のみ)

関連展示

「ドキュメンタリー映画公開記念展 いわさきちひろ(仮)」ちひろ美術館・東京

  • 会 期:2012年5月23日(水)~8月26日(日)
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