〈出版記念展〉―三国志はおもしろい!―
中国の絵本画家 于 大武(ユー・ダーウー)展

期間 2011年9月16日(金)~11月30日(水)
場所 展示室4
後援 株式会社岩波書店、中華人民共和国大使館、日本中国友好協会、長野県教育委員会
中国を代表する絵本画家の一人として活躍する于大武(ユー・ダー・ウー)。伝統的な絵画技法を用いながらも、現代的なデザイン感覚を取り入れた独自の表現で、中国の古典文学の世界などを描き出しています。その作品には、日本でも絶大な人気を誇る中国の歴史物語「三国志演義」があります。
本展では、『十万本の矢』(1997年出版)に続く、『空城の計』『七たび孟獲(もうかく)をとらえる』の出版を記念し、三国志絵本3部作を一挙公開します。

三国志絵本

漢王朝滅亡から晋が天下を統一するまで、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)が争覇した激動の三国時代。中国に実在した英傑たちが、知恵と力を交えて繰り広げる壮大な物語「三国志演義」のなかから、三国志絵本では、知恵者として名を馳せた蜀の軍師・孔明(諸葛亮)の「戦わずして敵に勝つ」逸話を描いています。薄くやわらかな中国の紙(熟宣紙)に工筆画*1と呼ばれる技法で細密に描かれた3部作には、各内容に添った表現の工夫が施されています。

『十万本の矢』―色彩の展開

呉に同盟を申し込んだ際に突きつけられた「十日で十万本の矢を調達せよ」という無理難題を、孔明が鮮やかに解決するこの作品は、美しい色彩の展開が特徴的です。大量の藁(わら)人形を乗せた船が川を渡る情景が何度も登場しますが、時間とともに移り変わる霧の濃さや光の様子を、青や橙(だいだい)など、場面毎に異なる色彩で描くことで効果的に演出しています。

『三国志絵本 十万本の矢』より 1997年

『空城の計』―心理の対比

『十万本の矢』から12年後に描かれたこの作品では、構図における“密と疎”“多と少”の対比や大胆な遠近法によって、物語の展開のなかで変化していく登場人物たちの心理を表現しています。
15万の兵で押し寄せる魏軍を前に、わずかな兵しか残らない西城の城門に上り、孔明が心理戦を仕掛ける場面では、手前に大きく優雅に琴を弾く孔明を、遠くに小さく密集して進軍を躊躇する魏軍を配置することで、物理的な優位性に対して心理的な優位性が逆転している状況を浮かび上がらせています。

『三国志絵本 空城の計』より 2009年

『七たび孟獲をとらえる』―南方の風俗

強情で敗北を認めない南蛮の王・孟獲を、孔明は捕えては解放し、七度目に心から従わせるという話を描いたこの作品で、画家は、舞台となった中国南方(雲南・貴州周辺)の地域性の表現に心を砕きました。孟獲の妻・祝融(しゅくゆう)夫人が捕えられる場面では、緑鮮やかな椰子の葉が孔明を囲み、夫人は羽根飾りなどの華やかな装身具や美しい装飾が施された民族衣装を身に着けています。雲南で出土した漢の文物など、画家自ら多くの資料を調査し、南方特有の文化や少数民族の風俗を丹念に描き出しています。
近年の中国では、世界的な絵本が数多く翻訳出版されていますが、自国の絵本画家が育つための環境はまだ十分に整っているとは言い難い現状もあります。そのなかで、20年以上にわたり、最前線で創作を続ける于大武。連環画*2の編集に携わり、自らも連環画を描くなかで培った伝統技術に加え、日本の編集者との交流を通して学んだ絵本表現を取り入れて描き出した、于大武の三国志の世界をお楽しみください。

『三国志絵本 七たび孟獲をとらえる』より 2008年
*1   中国画の技法の一つで、輪郭線の上に色彩を載せて描く写実的な技法。
*2   20世紀初頭、上海で興ったポケット版の絵物語を指す。1頁毎に罫線で囲んだ絵1コマと、100字程度の文字を配し、1冊数十~数百頁で構成されたもの。

展示品数 約30点

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日程 :9/24(土)、10/8(土)、10/22(土)、11/12(土)、11/26(土)
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料金 : 無料(入館料のみ)


原語で楽しむおはなしの会

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時間 : 14:00~15:00
申込 : 参加自由(事前申し込み不要)
料金 : 無料(入館料のみ)
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