建築家・内藤廣が語るちひろ美術館

2015年4月18日(土)

ちひろ美術館を設計した建築家・内藤廣が、美術館建築や安曇野の地について、2016年夏オープンの「トットちゃんの広場」に込める思いなどを語りました。模型や資料に囲まれた多目的ギャラリーには約70人の参加者が入り、質疑応答も活発に、熱気ある90分間となりました。その一部をご紹介します。

居心地のよい空間づくり
「絵本は、いろんな解釈があるけれども、美術とそうでないものとの境界にあるもの。文字は、物語や文学、詩と呼べるだろうし、挿絵は、絵画、アート。本全体のつくり上げ方は、エディトリアルデザイン。全部のことをつなぎ合わせると、いかにも美術館らしい建物とは違うだろう。図書館と美術館の間のようなものをつくりたいと思った。」
「展示室は、展示室の機能を果たすようにできるだけ箱にしよう、それ以外はできるだけ外に広がっていこうという考え方をした。」
「天井は、小ぶりな屋根がつながっている形にしたかったので、普通の材木屋さんで手に入る長さの唐松を使っている。この天井のひん曲がっているところは、デザインではなく、完全に構造的に合理的なもの。加えて、のぼりばりが壁に突き刺さっているのは、建築的には、ありそうでない収まりで、コンクリート側に細かい造作をしている。住宅スケールながら、あらゆる知恵をつかってできていることを知ってほしい。」
「建物を建てるときは、その関係者には、さまざまな強い思いがある。そのときのことばや主張を、そのまますべて受け止めるのは難しい。ことばの向こう側にあるものをしっかり捉えられていれば、後はいいのかなと思う。それを言わせている気持ちみたいなものが大事で、その思いを建築家が受け止められれば、設計はできると思う。」

ワークショップの模様

安曇野の地
「安曇野館の建設予定地は、すごくきれいな棚田で、黄金色の稲穂があり、そこに水がとうとうと流れていて、白馬連山に雪があり、こんなところに建ててもいいのかと思うほど美しい場所だった。安曇野は、春夏秋冬それぞれに良い。おすすめは、何もない水田に水がはってある時期。晴れていると、鏡みたいに全部の景色が映りこんで美しい。」
「新幹線が通らなくてよかった。ここは、高速交通網体系から外れた数少ないところで、日本の原風景が残っているところだ。」

「トットちゃんの広場」の計画
「トットちゃんの広場には、トモエ学園の面影を残したような小さな建物があって、手前に広場ができて、電車があって、公園のなかには、飯ごう炊さんができる場所があったり……ストーリーのなかにあるものをできるだけいれたいと考えている。そして、花畑を間において、ちひろ美術館がある。こんな大きな、のびのびとした、景色が見えて、山が見える公園は、全国どこにもない。トットちゃんのことを全然知らない人が来ても面白いだろうし、非常に豊かな場所がつくれると思う。」(田邊 絵里子)

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